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……元来受験術に興味を有って了ったり何かするようなタイプの子供は、その限りでは決して多くは伸び得ない子供ではないかと私は考える。子供の時から、親やの人達に教えられて神様のことなどを口走ったりするような子供は、その限りでは決して真人間になる見込がないと私は思っているが、丁度そういう意味に於て、私はそう考えるのだ。例えば受験術・受験法・に精通しているような中学校卒業生は、決して信頼し得る秀才ではあるまい。児童についてだってその通りだ。それから、こういうタイプの子供が大きくなって学者にでもなったとすれば、例えば経済の研究をやる代りに経済学方法論ばかりに興味を有ったり、教育に興味を有つ代りに教育学や教育学方法論にばかり関心を持ったりするタイプになるのだろう。精神のこういった種類の歪曲は、児童の受験準備の間にすでにその萌芽を見出すのではないかと、いうのである。
『あ、そう……。』
こんな馬鹿げたことを誰も本気にする人間はいないというかも知れないが、しかし、これが堂々と新聞の社会面に段抜きで押し出されるのを見ると、こういうものを『常識』として受け取る読者も少なくないのかも知れない。ビジネススタイル……冥想……星……月光……神秘……遁世、こういう1連の常識的連絡は、今日でもなお床屋的社交界などでは通用するのかも知れない。いやその新聞の記者や編集者は、確かに通用すると考えたに相違ないのだ。
また日記や自叙伝においては、本来、偉大な人々も、彼等の超人間的な行為や事業のすばらしさについて語るよりも、むしろ彼等の人間らしい生活や運命について書くことを好むものであるから、自己誇示はいふまでもなく、自己暴露ないし自己露出ということも日記や自叙伝においては堅く禁じられている。そこにおいてほどリアリズムの要求されるところはないのである。
つまりカント風の解明によると、啓蒙の1応−『1応』−の非政治的特色[これは実はそれが1つの政治的活動であるが故にこそ必要な特色だ……丁度文学が本当に政治的な活動力を有っためには下手に政治的になることは許されないように]を逆用して、これを本当−『本当』−に非政治的な特色へ引き直して了う。啓蒙の本来の政治的本質−『政治的本質』−はどこかへ行って了う。丁度日本の『政治』が政治の名の下に却ってその政治的本質を隠して了っているので、もはやこれを政治とはいい得ないように[代議士達のやっていることは政治であるか!]啓蒙も亦、わずかに『政治家式』のしょせん『政治』のような意味に於てしか政治的ではなくなる。それが何か教育−『教育』−とかポプュラリゼーションとか其の他其の他というものに帰しそうになる所以なのだ。
併しそれはそれでよいとして、1体風俗がぞくすると考えられたこの道徳なるものは何であるか。最も通俗的な規定としては、善し悪しを判定する標準のことか、または善し悪しを決める場面のことだろう。
これは帝大出の『学士様』がかつて官吏就職という立身出世の利益地盤をあてにしたのと変らないが、併し帝大は営業の形を取らずに国家財政の方針を回り道にして来るから、私大程活発には実際社会の昨日今日の利害関係に影響されない。私大では商売にならないような学科や講座でも、帝大ではある時期迄は保存される。……でこう考えて来ると、矢張り私大よりも帝大の方が、まだ多少学問的な自由の可能性の余地があるかも知れない、という差違が発見されるのである。ただそのしょせん学問の自由−『学問の自由』−ということの意味が、更に厄介な問題なのだが。
映画は確かに芸術が建前だ。
だから吾々はまた、世の中の風俗の褶や歪みや蠢きから、時代の夫々の思想の呼吸と動きとを、敏感に抽出することも出来るわけである。
風俗は、社会のただの習慣や便宜や約束ではない、また単なる流行其の他の類でもない。単に世間が皆そうしているという事実だけではなくて、この事実が社会的強制力を持っており、そして道徳的倫理的権威と、更にそれを承認することによる安易快適感とを惹き起こしつつあるものが、風俗である。風俗にぞくする規定の代表的なものは、前にもいったように社会に於ける性関係だが、事実はこの性風俗が最も端的な通常道徳の内容をなしていることを、注目しなければならぬ。風俗壊乱という1種の反社会的現象は、主に性風俗の破壊を指すことはいうまでもないので、これが社会風教上の大問題だと政治的道学者や風紀警察当局は考える。風俗は全く道徳的なものだ。
昨日は、見当をつけて、ある出版社を訪れ、印税の残りを請求してみた。来月の〇日まで待ってほしいと、社長からの返事だ。全く現金がないらしい。次に、ある雑誌社を訪れて、原稿料の前借を申し込んでみた。原稿執筆の約束があるのだ。編輯長はひどく当惑そうな顔をして、とにかく、原稿を、たとえ完結しないままでもよいから、持って来て頂けまいかと、逆な頼みだ。
『長く雨が続いたから、空気が大変に綺麗になったようですね。』
今、中等学校教員の生活問題から来る反対動機はさし当り論外としよう。なぜならこれはたしかに社会に於ける−『社会に於ける』−『教育−『教育』−』なるものの重大問題であるのだが、併し少なくとも直接には、被教育者の教育の問題ではないからだ。これを抜きにして考えるとして、即ち被教育者の教育だけを社会に於ける教育全体から抽象して問題にする限り、教育年限が長すぎて悪いということはどこにもない筈だ。まして日本だけが教育年限を短縮しなければならぬという理由はどこにもない。だからその限り−『その限り』−吾々は、遽かにこの中等学校年限短縮案には賛成出来ない、といわねばならぬ。
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